夏の音
初めてくるこの町はスーツを来た人がいないなっていう印象で
暑い日差しをサンバイザーでよけながら町に目を凝らす
なかなか面白いお店があるようで
ランプ専門で扱っているお店や手作りラスク商店
古びた町に似合わないような 似合うような
店前に吊るされているガラス細工がキラキラと光ってとても綺麗だった
大きい橋を渡る
橋に入る前の料金所はにこやかなおじ様が迎えてくれた
橋に差し掛かると
目の前には一面に広がる青い海と町の海岸線 それに港が見えた
橋を下り 島 に入る
ゆるやかなカーブを進めば海の公園の駐車場
ほかの車がないところに止めちゃうのは私の車は特別だから
自意識過剰かしら まぁそれでもいいけどね
二匹の猫が出迎えてくれて なんか色々 自然なんだなって感じた
猫は野良見たいで汚かったしちょっと臭った
家に持ち帰って洗ってあげたいな とか
猫のいる生活… とか
どうやって生きてるんだろう とか
色々考えながら日陰で寝転ぶ猫を見つめる
公園の入り口はかなり閑散としていて
コンクリートの建物と簡単なトイレだけだった
まっすぐひかれたアスファルトの両サイドに生えるよくわからない木は
今が育ちざかりと言わんばかりにセミをくっつけて青々と伸びていた
よくわからない木の列が終わり視界が開けると
広場に出る
広場の向こうは海で 草原と海の組み合わせに少し息を飲んだ
ふと思い出したのは 北海道のオロロンラインを走った記憶
大学の頃にドライブだーって無理やり友人を乗せて二人で向かったっけ
遥か向こうの入道雲まで続く県道を境に
視界の左には 海が広がって 右にはずうっと向こうまで広がる草原と白くて大きな風車
隣の友人は窓の外に顔を出して感動していたっけ
大学を卒業してからあの友人とは会っていない
連絡が取れなくなってそのまま
東京へ帰ったのかそれとも北海道に残ったのか
良くわからない 探そうと思えば探せるだろうに
彼女から連絡が来ないなら私は探さない 探したくなかった
私はもう裏切られた気分を堪能したよ
そんなことは置いといて
広場のはじっこには高台があって上ると島の周りを一望できた
ちょっと風が強すぎて髪の毛がグシャグシャになってしまうので早々と降りる
途中のベンチに腰掛けて タバコに火をつける ほんとは吸っちゃダメです
塩のにおいに煙が流されて消えて行く
吐き出した煙もフォーカスが定まらない青く光る海に消えて行った
ここにきてとくに意味はなかった
私の車を飛ばしてどこかへ行きたかっただけ
島の海岸線へ降りて行って海を間近に感じても
私の行きたい海ではなかった
でもとても良いところで
なかなか嫌いではないかも
また来ようかな
いつか海の見える所に住んでみたいって思えた