小さな男の子

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コンクリートの壁に落書きをしている子供がいた

クレヨンだろうか

赤色をすり減らしながら壁に描かれる文字は汚くて読めたものではなかった

 

夏の日差しが差し込まずどんよりと落ちてきそうな空

コンクリートは蒸し焼きにされて熱を放出していた

額に汗を流しながら少年は夢中になって絵と文字を書いている

 

私もそんなことをしたっけか

通学路に油性マジックで書きまわって先生に怒られたのを覚えている

恥ずかしい思い出なんて思い出したくなんてない

 

なんて考えていると少年は居なくなっていて

壁の絵に興味が出た

 

近くまで寄ってみていると

恐竜や有名なパンの戦士が下手ながらも書かれていた

私は笑いをこらえられずクスリと微笑んだ

 

気づけば少年は私の近くに居て

目を輝かせながら私の前に出てきた

 

土でいっぱいに汚れた手でクレヨンを握り締めて絵を書き始めた

 

この子には夢があって

たくさんのことを知って

たくさんのことを経験して

たくさんの人を会って

たくさんの人を話して

 

とにかくこの子には未来があるんだって思えた

まるで私と正反対のその子の夢の物語は

私にとって胸がつらくなる内容だった

 

私もがんばらなきゃって思うけど

私が向かう先は雨雲があって

いつ振り出すか怯えながら傘を握り締めて歩くことしかできない

 

絵を描き終えた少年はコンクリートの壁から離れて自分の作品を

満足そうな顔で見つめていた

私が幼くなったのか少年が成長したのかはわからないけれど

とてもうらやましかった

 

私が後ろに居ることを忘れていたのか振り返って気づいた私をみて驚いてた

私がまなざしを向けると恥ずかしそうに礼をして走っていった

私はしばらく見つめていた

 

コンクリートから出る熱で少年が歪んで見えた