海 時間 光
いまだ、海への道は まだ遠い
見えてくることのない海は 私を待っているのだろうか
窓をすこし開けて海の匂いがするかどうか試してみた するわけないのにね
緩やかなカーブを描く山の側面を走る高速道路
私の赤いスポーツカーを私は信頼してる
彼の名前はマリア
音楽も流れていない車内は私の息遣いとマリアのうめき声で満たされていく
山から下りる しなやかな下り坂で視界が開けたと思えば町の光が見えてきた
明け方の空気は澄んでいて
今から顔を出すだろう太陽の光が海に反射していてとても綺麗
もうすぐだよマリア
ICを降りて街中にでる
町の仕組みはとてもわかりやすくて本通を進めば海につきあたる
途中に あっても意味のない明かりで照らし続けている古びた電柱と 古びた自動販売機を見つけて ブレーキを踏みたくなる
マリアはまだ走りたそうだったけれど 私の喉を潤おわせてよ
どこのメーカーかもわからない炭酸水手にとってマリアに乗り込む
アクセルを踏み込めば
声を響かせてコンクリートを強く蹴って走り出してくれる
空のグラデーションがかなり明るくなってきた
海までもうすこしだよ
海岸沿いに出て 海を横目にしばらく走れば
海に続く大きな階段が見えてくるはず
行き止まりの看板を過ぎてコンクリートの感触が無くなる
砂浜の始まりはここから
ペットボトルとキーを片手に車から降りる
砂浜を裸足になって歩いてみたくて
いつもより強い波を肌で感じてみたくて
体全体で潮風を感じてみたくて
いつもよりウキウキしてる私の心臓は
高鳴りを抑えることはできないみたい
脱いだ靴に靴下を入れて助手席の足元に置く
砂の感触は気持ちのいいものだった
しばらく歩けば あと2メートルほどで海
おかえりって聞こえた気がして
ただいまって小さくつぶやいた
それから私は足で波を感じたの
冷たくて気持ちが良かった とっても
気づけば 私はマリアから結構離れていたみたい
マリアはこちらを見つめていた一人で小さくはしゃぐ私をね
満足から来るため息をひとつ吐き出して砂浜に座り込む
足を抱えて膝に顎を乗せる
炭酸はぬるくなって不味くなっちゃった
さよなら私の夏