淡色の春風になびく髪
大好きな友人と旅行に行った
人間ひとりで生きているよりも
やっぱり打ち明けられる人が近くに存在するのはとても気持ちがよいことで
都合のいい関係かもしれないけれど
二つの夜と共にすごした
でも時間がたてばたつほど相手から見えてくるのは
口元から伸びた引き裂かれたような歪んだ口先
耳元まで裂けてギラギラと光る歯
相手にとって獲物でしかない私は
好物のバタービスケットをオーシャンとオーシャンの仲間たちと一緒にかじることしかできない
手元にあるのは腐りかけのリンゴとさびたナイフで
白く霧が掛かったテラスに出れば
化けの皮でも破けそうな気がする
友人と過ごした旅行は楽しかったけれど
帰り道
駅まで送ってくれた友人が
舌打ちをしたのか タイヤの擦れる音だったのかわからないけれど
聞こえたときは
悲しくなる
私はすぐにだめになる
開いた窓からハンドルを片手に笑顔と淡い色の髪の毛をなびかせながら去る友人は
とても美しかった
まるで毒リンゴのよう